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場面緘黙(選択性緘黙)とは

本ブログでは場面緘黙(選択性緘黙)の概要を説明します。

場面緘黙とは、普段家の中などでは流暢に話せているのに、学校や人前など特定の場面で話せなくなってしまう症状です。普段話せているため「話したくない」や「わざと黙っている」などと勘違いされてしまうことも少なくありません。わたしが小学2年〜4年生だった時のクラスメートの男児が場面緘黙でした。学校では一切声を聞くことはありませんでしたが年賀状を出したらハガキいっぱいに小さい字でみっちり返事を書いてくれて飛び上がるほどうれしかったのを覚えています。

わたしが通った小学校は今思えば開放的でインクルーシブな学校でした。車椅子のクラスメートもいましたので女の子達は、着替えやオムツ替えを自ら手伝いました。運動場や下校など車椅子を押したりするのは日常のことでした。幼少の頃のこういった体験はわたしがセラピストになりたいと思ったベースになっています。

場面緘黙のお子さんは、感覚的な問題(感覚統合障害)を持っていたり、不安や緊張を抱えていることが多いです。話すことを強要することは避ける必要がありますが、親や学校の先生は、励まそうとしたり、「どうして話せないの?」などプレッシャーを与えてしまうことがよくあります。「話したいけれど話せない」という問題を抱えていますので、自尊心や自信を傷つけたりしないように周りは気をつけなければいけません。本人の不安や恐怖をなるべく取り除けるよう、過ごしやすい環境を整えること、本人のペースに合わせながら徐々に環境を変え成功体験を積み重ねていくことが大切です。

下記、場面緘黙について、その件数(発症率)、主症状、考えられる要因、合併症、支援の方法について説明します。

1.日本における場面緘黙の件数や発症率

場面緘黙とは、発声発語器官に問題がないにもかかわらず、特定の場面などで話すことができなくなることを言います。

日本での場面緘黙症の発症率は、およそ0.1%から0.5%と推計されています。男児よりも女児の方に発症率が高くみられます。5歳未満に発症することが多いですが、就学時まで気づかれない場合もあります。

2.主な症状

 2014年に新たに出版されたアメリカ精神医学会の「DSM-5」では不安障害の一種とされ、診断基準は以下のようになります。

A.他の状況では話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)において、話すことが一貫してできない。

B.その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。

C. その障害の持続期間は、少なくとも1ヵ月(学校の最初の1ヵ月だけに限定されない)である。

D. 話すことができないことは、その社会状況で要求されている話し言葉の認識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない。

E.この障害は、コミュニケーション症(例:小児期発症流暢性)ではうまく説明されず、また自閉症スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

3.よくみられる合併症など

 場面緘黙は、発達障害ではなく不安障害の1つの症状と考えられています。しかし自閉症や言語への苦手意識を持つ場合も多く、構音の問題を抱えていることもあります。

また、感覚統合の障害などが複合的に関係している場合が多いと考えられています。

いずれ治るのではないかと適切な治療を受けないことにより、うつ症状などの併発、不登校などの問題を引き起こすこともあります。

4.緘黙の要因

 場面緘黙の原因や発症メカニズムは正確には明らかになっていません。

 生理学的要因として「不安になりやすい気質」があり、そこに心理学的要因や社会/文化的要因などいくつかの要因が影響しあって発症すると考えられています。また発達的問題として感覚統合、ことばへの苦手意識、知的発達なども関わりがある可能性があります。

 環境的要因として、入園入学、転校など生活の中における大きな変化が複合的に関連しているとも考えられています。

以前は親の態度が過保護あるいは無関心などが原因になると考えられている時期もありました。しかし、現在は親の育て方そのものは緘黙の要因になるという説は否定されています。

5.支援の方法

 場面緘黙に対する支援としては、話すことそのものよりも不安や緊張を取り除くことが重要になります。主な治療法としては次のようなものがあります。

・遊戯療法

 遊びを通して、子どものストレスや緊張を和らげて、子どもに負担をかけずに行うことができます。

・認知行動療法

 子どもの考え方や行動などに働きかけることで、話すことへの恐怖や不安を改善していくことを目的をして行います。

・薬物療法

 不安や緊張を和らげるために薬物を使用する場合もあります。効果には個人差や副作用の可能性もあるため、きちんと医療機関で医師に相談することが必要になります。

次ブログでは、具体的な支援の手引きと支援方法の例をご紹介します。

参考文献

 ・DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル, 2014, 医学書院

 ・ここまでわかった言語発達障害 -理論から実践まで-, 2011, 医歯薬出版

 ・臨床家のためのDSM-5 虎の巻 ,2014, 日本評論社 

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