「感覚統合セラピー」の基礎講座を終えて(講義者:OT佐々木清子先生)
ルクリエでは、顧問の作業療法士である佐々木清子先生を招き、「感覚統合セラピ—」に関する勉強会を開きました。STを中心とした専門職や療育支援者が5人集まり、アットホームな雰囲気の中、約2時間に渡り内容の濃い講義を聞くことができました。
レポーター:ルクリエ ST船平舞さん
〈感覚統合の基本〉
講義の前半は「感覚統合」の基礎概念をお話いただきました。
感覚統合に重要な主な3つの感覚:
1 触覚
2 固有受容覚
3 前庭覚
「触覚」は触れたときの圧や痛み・温・冷感覚を司ります。「固有受容覚」は体がそれぐらい動いたのかを知らせてくれます。「前庭覚」は体がどれぐらい傾いたかを教えてくれる感覚です。
これらの3つの感覚に加え、様々な感覚がバランス良く発達していくことで、脳の機能の働きが育っていきます。どこかの感覚が上手く機能しないと、バランスが崩れて色々な場面でつまづきが出てきます。「身体イメージがつかめなくて、うまく動けない、踊れない。お箸やはさみが使えなくて工作が苦手になる。注意が散漫になってしまう。」のです。その結果、自信がなかったり、集中できなかったり、友達と協調性がとれないといったことがみられることは珍しくありません。
脳の働きにとって感覚の発達は非常に重要です。にも関わらず、注目されることが少ないということも事実です。
その理由として
・社会性や行動の問題のように目立たない
・他の人からは原因がわかりにくい
・脳の働きと関連づけて理解する枠組みが持ちにくい
・本人も他の人と異なることに気づきにくい
などがあげられます。感覚の弱さは一見すると分かりにくく、他の人からは理解するのが難しいものです。また、本人にとっても自覚するのが難しいのです。
講義では「触覚過敏体験」も行いました。
2人1組になり、一人がもう一人の腕を
①そ~っとゆっくりなでる
②軽く圧を加えながらなでる
圧の加え方で全く感覚が違うということを実感しました。また、自分で触るのと、他の人から触られるのでも全く感覚が異なることも改めて実感しました。
〈具体的な遊びについて〉
講義の後半では、具体的な遊びを紹介して頂きました。
1.シーツや毛布を使った遊び
いつも落ち着きがなく動き回っているお子さんは、シーツや毛布でくるんでゆっくり静かに揺らしてあげると、脳の興奮が沈静化する。また、反対にぼんやりとあまり覇気のないお子さんには、激しく大きく揺らすことで脳を興奮させることができる。
2.トンネル遊び
トンネルをくぐることで、様々な触覚を体験できる、身体のイメージを作ったり手足の筋肉からの感覚も得ることができる。
3.手先の巧緻性を高める遊び
洗濯ばさみ、 クリップ、シール、ブロック、あやとり、折り紙、紐とおし、など。
これ以外にも「お絵かき」についても詳しく教えていただきました。お絵かきが苦手、好きではないお子さんには描くための素材も工夫をすると、積極的に描き始めるお子さんもいるそうです。例えば、葉っぱや布を使ったり、紙に描くだけでなくアルミホイルや、でこぼこの台紙に描いてみるなど、楽しめるような工夫ができると佐々木先生は様々なエピソードを交えてお話してくださいました。
その中でも特に印象に残ったのは、気分の乗らないお子さんには、決して無理強いしないといということでした。気分が乗っていないときは何をやっても意味がないので、こちらに気が向くまでじっと待ってあげることが必要だということです。
指導者、支援者は、「今日はこの課題をやらなければ」という気持ちが強くなってしまいがちですが、焦らずにそのお子さんが今欲していることを確認することが大切です。そのためには、その子の今日のコンディション、幼稚園や学校での出来事など環境についての確認が不可欠です。
感覚統合は療育現場では、よく耳にする用語ですが、しっかり学べる機会が少ないのが現状です。今回の講義では質問応答が飛び交い、具体的な疑問点について意見交換をしながら掘り下げて理解することができました。刺激的な勉強会でした。
