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吃音と場面緘黙について理解を深める(全5回):吃音の診断基準と治療

吃音(きつおん)や場面緘黙で悩んでいる人は多くいると思います。事実、吃音の人は概ね100人に1人の割合で存在し、日本では約120万人、世界では約7000万人もいるといわれています。2020年現在の日本の総人口が約1億2593万人ですので、数字では1%にも満たないですが、100人に1人の割合で考えると、学校の1学年に1人はいることになります。また、場面緘黙は200人に1人の割合で存在し、日本では約60万人、世界では約3500万人超であるといわれています。よって、1学校に約1人存在している計算になります。

しかし、今現在確実な治療法はまだありません。主な理由としては、舌の動きなどの身体的要因や当事者の心理的要因が複雑に絡んでいるため、その全てにアプローチできる方法が確立されていないからです。幸い、有効とされている療法やトレーニングは存在するので、基本的には症状の緩和に努めています。




また、周囲の人からの理解が得にくいことも特徴の一つです。なぜなら、他の人、とりわけ同年代の子供からは、「変な話し方をしている。」「何度言っても直さない。」「わざとそうはなしているのでは、、」「何が言いたいのか分からない。」、などと誤解されやすいからです。「あえてその様に話している吃り(どもり)」としか認識されないこともあり、親はもちろん、学校の教員や子供たちの理解や認識を改善する指導や支援が欠かせません。


本ブログでは、まず吃音について数回に分けてお伝えしていきます。

1回目は吃音の診断基準や治療に関する現状を説明します。


 

吃音の定義

吃音とは発話・発声器官に物理的な問題がなく、これらを協調して動かすことが困難となる言語の流暢性疾患である。この障害が発現すると、音声,音節,単語、速度、リズム、そして反復などの言葉の流暢性が失われる。かつて一般的には「どもり」として知られていたが、最近では差別用語としてあまり使われておらず、代わりに「吃音」という言葉で表されている。なお、医学用語では「小児期発症流暢症」、「小児期発症流暢障害」である。


分類

吃音は3つのタイプに分類される。

発達性吃音:幼少期に発現する

心因性吃音:心因ストレスによって発現する

神経原性吃音:中枢神経疾患(神経・精神疾患)の合併症で発現する。


幼少期に発吃するもののほとんどが発達性であり、大人でも9割以上は発達性である。

青年期では発達性吃音によってからかわれたり、笑われたりすることで心因ストレスによる心因性吃音を重複することも少なくない。7~8割方は自然治癒するが、自然治癒しなかった場合は長く続く傾向にある。


原因

現時点ではまだ不明ではあるが、遺伝要因や言語能力を司る脳のアクセスに問題が生じている点が解明されつつある。決して、親の育て方とは関係がない。


診断基準

基本的に、耳鼻咽頭科医が器質的要因を除いた吃音特有の発話症状(中核症状)を確認し、診断する。


【中核症状とは】

  • 繰り返し 例) わ、わ、わ、私は・・・

  • 引き伸ばし 例) こーーーれは、ペンです。

  • 阻止  例) 、、、、、、あの、・・・ (文頭に小さな「っ」が入って詰まるような様子) 

これらの症状が1つ以上見られ、かつ継続的である場合、吃音の可能性があると診断される。医療機関による診断を基に、言語聴覚士による吃音検査で評価する。そして、それらを基に治療方針を立てる。もし、吃音が疑わしい場合は耳鼻科以外に小学校に設置されている「ことばの教室」や通級指導、又は療育センターやリハビリテーション科に相談することが推奨されている。


吃音の定義や診断基準等に関して紹介しました。次回は、吃音の具体的な治療法や海外との治療の違いなどをみていきたいと思います。

 

〈参考文献〉

  • 赤星俊, et al. 「吃音検査法< 試案 1> について.」音声言語医学 22.2 (1981): 194-208.

  • 小豆畑病院 「吃音リハビリテーション」小豆畑病院 (2017)

  • 菊池良和 「吃音の世界」光文社 (2019)

  • 瀬尾達「病気スコープ 吃音」EPARK Medical Co., Ltd (2020)       

  • 田中恭子.「吃音(小児期発症流暢症)」週刊日本医事新報5006 (2020): 80

  • 髙橋三郎 「ことばの教室(通級による指導)ってどんなところ?」

  • 内田洋行教育総合研究所 (2019)

  • 日本福祉教育専門学校 「吃音症(きつおん)についてご存知ですか」

  • 日本福祉教育専門学校(2019)

  • Book Stand 「200人に1人の割合で存在する"場面緘黙(ばめんかんもく)" 8月1日、2日はフォーラムも開催」AERA. dot (2015)

  • 森浩一.「総説小児発達性吃音の病態研究と介入の最近の進歩」

  • 小児保健研77(2018): 2-9


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