吃音と場面緘黙について理解を深める(全5回): 場面緘黙の治療方法


治療方法

 基本的に、場面緘黙は臨床心理士や病院での対応だけでは改善するのが難しく、家族や学校といった周囲の不安を生じさせない環境づくりへの協力が必要不可欠である。しかしながら、病院側からもいくつかのアプローチ方法がある。


遊戯療法:プレイルームの中で、遊びを通して治療者と対象者が円滑な治療関係を作り、コミュニケーションをもってその対象者の心理状態の改善を図る心理療法の1つ。言語をあまり使用しなくても対象者との自発的なコミュニケーションを取ることが可能。対象者のストレス発散や対人関係の構築を促す。箱庭療法を取り入れて行うこともある。


箱庭療法:砂の入った箱の中に、人、動植物、乗り物、建物などのミニチュアを置き、何かを表現したり遊んだりすることを通して行う心理療法。箱庭という安全を保障された空間の中で自身の自由で行動・表現することで、自身のストレスの原因を発見・解消に有効。


行動療法: 臨床心理士が臨床心理学に基づいて行う相談による支援。面接で、臨床心理士が対象者の行動上の問題(過度の恐怖、習慣)に対して「不適切な対象者の考え方や行動の癖や反応」を把握して、治療者と対象者や時に保護者と共にそれらの行動面の修正を図る


カウンセリング:心理面でのサポート


言語聴覚士による支援:上記の吃音の治療で使用された方法を併用


薬物療法:抗不安剤などを処方する

これらを組み合わせて治療することで、「スモールステップ」、つまり一気ではなく段階的に特定の場面での恐怖心や不安を和らげたり、慣れてきた場合にご褒美などを指定することで、適切な反応を習得させることが可能である。


日本での支援と指導の現状

  この限定的な症状の特性上、社会的な場面で困難が生じるにも係わらず、家庭内では問題なく話せるということで、見逃しやすく診断の遅れが生じやすい。また、学校では学級経営上の困難や担任教師の負担にはそれほどなっていない為、この困難さを外へ訴えることが難しい。つまり、場面緘黙という病識を持つのが当事者自身を含めて非常に難しいため、自発的な相談や治療を行う機関に赴くことが稀であり、又その治療する機関自体が少ない。

指導面に関しても、家庭と学校、それに医療機関の連携が必要だが、現状の教育システムでは難しい。特に、以前の場面緘黙の認識である「わざと話さない」が、担任教師に「わがまま」や「甘え」、「過保護な親」などという間違った考えを引き起こしやすい。それによって、より三方の連携を困難にしている。


海外での支援と取り組み


 諸外国でも、行動療法や遊戯療法、薬物療法は使用されている。しかし、アメリカやイギリスでは学校を軸に置いた認知行動療法などの多面的アプローチを行っている。例えば、幼稚園、保育園、学校などの社交性を要する集団環境では、教師や保健師が中心となって支援チームを組織し、子供の交友関係や発話を段階的に改善し、自己効力感を高めていくというプログラムを実施している。日本に比べ、治療のシステム化に進みが見られる。



〈参考文献〉

  • 角田圭子 「場面緘黙のアセスメントについて」日本保健医療行動科学会年報 27 (2012): 68-73

  • 中島裕子 「場面緘黙の理解と適切な環境設定に関する考察 ―A君の支援を事例に」 事業研究社 54 (2015): 49-54

  • 日本緘黙研究会 「場面緘黙(ばめんかんもく)の簡単な説明」日本緘黙研究会

  • 久田信之, et al「場面緘黙(選択性緘黙)の多様性 ―その臨床と教育―」不安症研究 8.1 (2016): 31-45

  • 矢澤久史 「場面緘黙児に関する研究の展開」東海学院大学紀要 2 (2008): 179-187

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